『いちごみるく』

 苺と牛乳の味がするんだと、年端も行かない赤色の少年が机の上に出したのは、質の悪い紙に覆われた指先ほどのキャンディだった。
 なんてことは無いただの牛乳飴で、恐らく苺ではない植物の赤色と、少しの酸味を加えられただけのものだ。多分彼も、知ってて言ったのだけれど。
 遠慮なく(ここで遠慮するのは僕のキャラじゃない)貰ったキャンディの包装紙をひらいて数秒。口の中で中途半端に蕩けた飴を噛んだ。苺の酸味なんかこれっぽちも再現されちゃいない。キャンディはその外側を砕くと中で柔い部分と硬い部分でいくつかの層になっていたらしく、想像以上に簡単に潰れてしまった事に内心落胆する。表情には、出てないと思うけど。

「白雪。飴、噛むなよ」
「あは。アカちゃんは『お子様』なのに噛まないの? 子供の特権だっていうのに勿体無いよぉ~」

 笑って見せるけれどもアカちゃんに反応はない。じっと僕の瞳をみつめたままの赤色が居心地を悪くさせた。
 勿体無い? 子供の特権? なんて。いいや、嘘なんて毎日毎時間ついているものだけれど、なんとなく心がゆらいだ。紛い物の苺味に少しだけやられたのか。

「噛まねえよ。嘘くさい味だし、ちょっと酸味がきついけど」
「甘いよ?」

 充分に。度の過ぎる甘党のアカちゃんだとはいえ、これは十分に『及第点』の甘さのはずだ。それ以外にはなにもない。ほんの少しの酸味、それも、ほんの一瞬だけ。

「じゃあ休む必要でもあるのかな。……狼が言ってた。すっぱいのと甘いの、いっしょのものたべて酸味を感じないときはゆっくりしたらいいって」

 

 噛んだ飴の欠片が舌の先を傷つけた。痛い、かもしれない。

 

『いちごみるく』
(アーサーと白雪/イチゴミルクキャンディ食べたい)