『窓際』

 窓に浮かぶ雨。肘をついて、窓を見つめていた。

「センチメンタルだ」
「メランコリックよりくそったれだな、」

 第一声だった。普段の振舞いからは想像もできない静かな声だった。見知った不法侵入者。
 「そのソファはあいつの特等席なんだけど」、なんて言葉は飲み込んでその後姿を見つめていると、長い髪を床にそのままだらんと垂らしたまま、透明にも見える深く浅い蒼色と目が合った。

「なぁに、イルくん。僕は憂鬱なほうがいいって?」
「どちらにせよこの上なく扱い辛いという点に於いては、変化の少ないものの方が、まだ対処を考え易い」
「は、そりゃ結構なことぉ」

 そう言って、白雪はまた窓の方へと向き直る。いつも通りの、いつもの雨。いつもと違う、冷たい部屋の空気はきっと、雨で冷えたせいじゃない。

「嫌いなんだよね、雨」
「そう、」
「慰めてよ。優しく、して」
「センチメンタルな奴に何を言ったって無駄だろう」

 それからの返事は無かった。恋わずらい、という言葉が頭の隅で浮かんで、そういえばこいつは、紅い瞳の大賢者に恋をしていたのだったか、と思い出す。
 俺の恋人も、黒い髪に紅い瞳をしていた。

 

『窓際』
(イルと白雪 / 台詞SS「メランコリックよりくそったれだね」)